表皮水疱症について
表皮水疱症の病型と症状
表皮水疱症(Epidermolysis Bullosa:EB)は、水疱ができる皮膚のレベル(解剖学的な深さ)によって主に3つの型に分類されます。表皮内(基底細胞内)に水疱ができる「単純型表皮水疱症(Epidermolysis Bullosa Simplex:EBS)」、透明層に水疱ができる「接合部型表皮水疱症(Junctional Epidermolysis Bullosa:JEB)」、真皮内に水疱ができる「栄養障害型表皮水疱症(Dystrophic Epidermolysis Bullosa:DEB)」です。さらに水疱形成位置には関係なく、ほかの特徴的な所見で診断される「キンドラー型表皮水疱症(Kindler Epidermolysis Bullosa:KEB)」があります1。
サブタイプ(亜型)も含めると30種類以上の病型があり2、少なくとも17の原因遺伝子が明らかになっています。
病型
単純型表皮水疱症(EBS)
単純型表皮水疱症(EBS)は、発症する部位や症状の重さによって、限局型、中等症型、重症型、筋ジストロフィー合併型、幽門閉鎖症合併型などのサブタイプに分類されます5。共通する特徴は、発汗量が増えることで皮膚への摩擦が強くなり、特に暑く湿度の高い環境では症状が悪化しやすい点が挙げられます。
①限局型
主に夏季に手足のみに水疱が生じます4。
②中等症型
より広範囲に水疱を生じます。出生時から水疱や皮膚剥離がみられることがあり、生涯を通じて水疱形成が続くものの、徐々に軽減します。主に手足や衣服との接触部位に発生しやすい特徴があります。
③重症型
新生児期に重症化することがあります。敗血症や喉頭の水疱により、死亡リスクが高くなります。水疱は同じ部位に繰り返し発生することが多く、爪の下やその周囲、口腔内にもみられます。小児後期になると水疱形成は減少し、手のひらや足の裏に角化症がみられるようになります。
④筋ジストロフィー合併型
皮膚症状は軽度の場合もあります。筋ジストロフィーの発症は、幼児期〜成年後までと幅広く認められます。
接合部型表皮水疱症(JEB)
接合部型表皮水疱症(JEB)は、発症部位や重症度によって、重症型、中等症型、幽門閉鎖症合併などのサブタイプに分類されます3。責任遺伝子の違いにより種々の重篤な合併症があり、生命予後不良のサブタイプが多いのが特徴です。
①重症型
かつてHerlitz致死型と呼ばれたサブタイプで、ラミニン332が欠損することによって発症し、乳児死亡率が最も高く、1歳までに死亡します。出生時は限局していた水疱やびらんの形成が全身に拡大してきます。ラミニン332は消化管にも発現するため、敗血症は必発で、死因は敗血症、喉頭の水疱・呼吸困難、重度かつ改善困難な哺乳障害、慢性創傷などです。
②中等症型
水疱形成は全身にみられますが、生命予後は良好です。エナメル質形成不全、脱毛、萎縮性瘢痕、爪の変形がみられ、慢性的な創傷は生涯にわたって問題となります。
③幽門閉鎖症合併
α6インテグリンやβ4インテグリンの遺伝子変異によって生じ、皮膚のほか、消化管や泌尿生殖器系の粘膜にも存在します。新生児期に幽門閉鎖の外科的治療を行うことが重要ですが、遺伝子変異の部位によって予後が異なり、手術を行っても乳児期に死亡するケースが多くみられます。軽症例では中等症型と類似した経過をとりますが、泌尿生殖器系病変がみられることがあります。
栄養障害型表皮水疱症(DEB)
栄養障害型表皮水疱症(DEB)は、顕性型、潜性重症型、潜性中等症型などのサブタイプに分類され3、原因タンパクは、真皮に存在するVII型コラーゲンです4。一般に顕性(優性)遺伝性のものは比較的軽症であり、潜性(劣性)遺伝性のものは重症度が高いとされています4。
①顕性型
手、肘、膝、足など、外力がかかりやすい部位に水疱ができやすく、その部分はびらんとなり、上皮化した後には瘢痕や稗粒種が形成されることが多いです。一方、潜性重症型でみられるような手指の癒合や食道の狭窄はみられません。
②潜性重症型
この型は、VII型コラーゲンの発現の著しい減少や、欠損することで発症します。全身のさまざまな部位に水疱やびらん、瘢痕がみられます。特に腰や背中の皮膚は完全に治ることがなく、次々と水疱やびらんが生じます。皮膚の瘢痕により関節拘縮、偽合指症、食道狭窄、開口障害、眼球や眼瞼結膜の癒着、翼状片、成長障害、栄養失調、貧血などを合併し、心不全や腎不全をきたしやすく、皮膚には有棘細胞癌が発生しやすいです。
③潜性中等症型1
Ⅶ型コラーゲンの発現が一部残存しており、その質的・量的異常によって臨床症状の程度はさまざまです。全身に水疱と創傷を形成する傾向があります。貧血の発症がよくみられ、粘膜の病変もしばしば認められます。手指には瘢痕や軽度の癒着がみられますが、完全な合指には至りません。
キンドラー型表皮水疱症(KEB)1
この疾患は非常にまれで、FERMT1遺伝子の変異による常染色体潜性遺伝性疾患です。新生児期から外力によって水疱ができやすく、四肢末端側から徐々に多形皮膚萎縮がみられるようになります。乳児期以降は水疱が減るものの、年齢とともに光線過敏症や色素の変化、皮膚の萎縮などが増加し、皮膚にまだら模様が現れます。そのほか、歯周炎、食道や尿道の狭窄、乳児期の消化不良や下痢などもみられます。
標的タンパクと責任遺伝子
EBは、表皮基底膜部の細胞接着に関わる分子3や、それらの合成に関連する遺伝子に異常が生じることで発症します(表、図1・2)。また、異常なタンパク質が存在する部位によって、水疱ができやすい場所が決まります4。
栄養障害型表皮水疱症(DEB)
DEBでは、係留線維(アンカリングフィブリル)の重要な構成要素であるⅦ型コラーゲンが減少または欠如しています。Ⅶ型コラーゲンは表皮と真皮を結び付けるタンパク質で、COL7A1遺伝子の変異によって、表皮と真皮の分離が起こります1。
単純型表皮水疱症(EBS)
EBSの原因タンパクは、細胞質に存在するケラチン5、ケラチン14、BP230、プレクチン、KLHL24などです。これらのタンパク質の責任遺伝子(KRT5、KRT14、DST、PLEC、KLHL24など)に異常が生じることで発症します4。多くは、表皮基底細胞内でケラチン骨格を構成するケラチン5またはケラチン14の異常によって発症します。このケラチンタンパクの機能障害によって細胞が物理的に弱くなり、軽い外力でも水疱ができやすくなります2。遺伝子の変異が分子間重合にかかわる重要箇所かどうかにより、全身に水疱がみられる重症型、夏季に足だけに水疱がみられる限局型と重症度が異なります4。
接合部型表皮水疱症(JEB)
JEBは、上皮細胞を基底膜に連結するヘミデスモソームや、表皮と真皮の間にある透明層を貫通する係留線維あるいはそのリガンドを構成するタンパク質の遺伝子異常によって発症します。α6インテグリン、β4インテグリン、ラミニン332、ⅩⅦ型コラーゲンをコードするITGA6、ITGB4、LAMA3、LAMB3、LAMC2、COL17A1などの遺伝子異常が原因となります4。
ラミニン332のサブユニット(α3、β3、γ2)のいずれかに異常が生じ、その結果、ラミニン332の欠損が起こると、重症型となり、生後1年以内にほとんどの患者が死亡します5。また、α6β4インテグリンの遺伝子異常がある場合には、幽門閉鎖症を合併することがあります4。
キンドラー型表皮水疱症(KEB)
KEBは、FERMT1遺伝子の変異によりキンドリン1に異常が生じて発症します4。
| 病型 | サブタイプ | 標的タンパク | 責任遺伝子 |
|---|---|---|---|
| 単純型 | 限局型 | ケラチン5またはケラチン14 | KRT5、KRT14 |
| 重症型 | |||
| 中等症型 | |||
| 心筋症を合併した中等症型 | Kelch-like member 24 | KLHL24 | |
| 重症型 | ケラチン5またはケラチン14 | KRT5、KRT14 | |
| 中等症型 | |||
| BP230欠損の限局型/中等症型 | BP230 | DST | |
| エキソフィリン5欠損の限局型/中等症型 | エキソフィリン5 | EXPH5 | |
| 腎症を合併した限局型 | CD151抗原 | CD151 | |
| 筋ジストロフィー合併 | プレクチン | PLEC | |
| 幽門閉鎖症合併 | |||
| 接合部型 | 重症型 | ラミニン332 | LAMA3、LAMB3、LAMC2 |
| 中等症型 | ⅩⅦ型コラーゲン | COL17A1 | |
| ラミニン332 | LAMA3、LAMB3、LAMC2 | ||
| 幽門閉鎖症合併 | α6β4インテグリン | ITGA6、ITGB4 | |
| 間質性肺疾患およびネフローゼ症候群合併 | インテグリンα3サブユニット | ITGA3 | |
| 栄養障害型 | 顕性型 | Ⅶ型コラーゲン | COL7A1 |
| 潜性重症型 | |||
| 潜性中等症型 | |||
| キンドラー型 | ― | キンドリン1 | FERMT1 |
石河晃 2024 表1、Has C 2020より作成
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参考文献
- 1)Has C, et al. Br J Dermatol. 2020 ; 183(4) : 614-627.
- 2)難病情報センター. 概要・診断基準等 表皮水疱症(指定難病36) https://www.nanbyou.or.jp/entry/5339
- 3)石河 晃, 吉田憲司. 皮膚科の臨床. 2017 ; 59(6) : 822-829.
- 4)石河 晃. 皮膚科. 2024 ; 5(1) : 15-21.
- 5)Pulkkinen L, et al. J Invest Dermatol. 1997 ; 109(2) : 232-237.
- 監修
- 石河 晃(いしこう あきら)先生
東邦大学 皮膚科学 表皮水疱症再生治療学講座 教授