表皮水疱症について
表皮水疱症の病態
表皮水疱症(Epidermolysis Bullosa:EB)は、表皮基底膜部で表皮と真皮の細胞に関与する分子(例:Ⅶ型コラーゲンなど)のいずれかの遺伝子異常1により、表皮と真皮の接着が弱くなります。そのため、軽い物理的刺激でも表皮が剥がれやすく、水疱やびらんを繰り返し生じる遺伝性疾患です2。患者数は未登録者や未受診者も含めて1,000~2,000人と推定されるまれな病気で、厚生労働省の指定難病に認定されています3, 4。
病型
EBは、水疱ができる皮膚のレベル(解剖学的な深さ)によって主に3つの型に分類されます。表皮内に水疱ができる①単純型表皮水疱症(Epidermolysis Bullosa Simplex:EBS)、表皮と真皮の境界部(透明層)に水疱ができる②接合部型表皮水疱症(Junctional Epidermolysis Bullosa:JEB)、真皮内に水疱ができる③栄養障害型表皮水疱症(Dystrophic Epidermolysis Bullosa:DEB)、さらに、水疱形成位置には関係なく、ほかの特徴的な所見で診断される④キンドラー型表皮水疱症(Kindler Epidermolysis Bullosa:KEB)を含めた4つの病型があります22, 5。このうち、DEBがEBの約6割を占めます6。
出生時または乳児期から、四肢を中心とした外力が加わりやすい部位に水疱ができ、びらんや上皮化を生涯にわたり繰り返します1, 3。その症状の程度はさまざまで、瘢痕拘縮や歩行障害、偽合指症、食道狭窄、成長障害、栄養障害、貧血、心不全、腎不全などを併発します3。
原因遺伝子の種類や変異の違いにより、手のひらや足の裏に水疱が局在する軽症の限局型、全身に水疱やびらんが広がる重症型、幽門閉鎖症を伴う型、遅れて筋ジストロフィーを発症する型など、さまざまなサブタイプ(亜型)があります。
疫学
2020年に行われた全国調査6, 7では、2019年の日本で医療機関を受療した患者数は590人と推定され、女性の方がやや多い結果でした。
各病型の割合は表のとおり、DEBが最も多く、次いでEBS、JEB、KEBとなっています。重症度をみると、患者全体の56.2%が重症で、中等症と軽症の割合はほぼ同じでした。病型別に見ると、重症の割合が高かったのは潜性(劣性)DEBとJEBでした。KEBは症例数が4例と少ないものの、すべてが重症例でした。顕性(優性)DEBでは重症例と中等症例が同程度にみられ、EBSでは軽症例が多く認められました7。
発症時の年齢は1歳未満が多く、ほとんどの患者は5歳未満で発症していました。EBの家族歴は男性で36.6%、女性で44.4%に認められ、特に顕性栄養障害型では家族歴がある割合が多く、男女ともに75%に認められました6。
| 病型 | 病型の割合 | 重症度 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 重症 | 中等症 | 軽症 | |||
| 全体 | ― | 56.2% | 23.4% | 20.4% | |
| 単純型 | 28.0% | 22.1% | 32.7% | 45.1% | |
| 接合部型 | 6.3% | 88.5% | 11.5% | 0% | |
| 栄養障害型 | 58.2% | ― | ― | ― | |
| 潜性(劣性)栄養障害型 | 32.6% | 91.6% | 7.6% | 0.8% | |
| 顕性(優性)栄養障害型 | 19.2% | 40.5% | 36.7% | 21.4% | |
| 孤発性栄養障害型 | 5.8% | 62.5% | 25.0% | 12.5% | |
| キンドラー型 | 1.0% | 100% | 0% | 0% | |
| 不明 | 7.1% | 31.0% | 34.5% | 34.5 | |
令和3年度厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 分担研究報告書(2021)より作成
参考文献
- 1)石河 晃, 吉田憲司. 皮膚科の臨床. 2017 ; 59(6) : 822-829.
- 2)石河 晃. 皮膚科. 2024 ; 5(1) : 15-21.
- 3)日本小児科学会. 移行期医療における疾患別ガイド 表皮水疱症(2024) https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240130_GL052.pdf
- 4)石河 晃. 小児診療. 2015 ; 78(11) : 1593-1596.
- 5)Has C, et al. Br J Dermatol. 2020 ; 183(4) : 614-627.
- 6)石河 晃 他. 令和2年度厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 分担研究報告書(2020)
- 7)黒澤美智子 他. 令和3年度厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 分担研究報告書(2021)
- 監修
- 石河 晃(いしこう あきら)先生
東邦大学 皮膚科学 表皮水疱症再生治療学講座 教授